熱帯熱マラリア原虫のゲノム情報が2002年に公開され、約5400個の遺伝子のうち約200種類が赤血球への侵入型原虫(メロゾイト)に特異的に発現していると予想されている。申請者らは、コムギ胚芽抽出液を用いたハイスループット無細胞蛋白質合成法により、原虫遺伝子を改変することなくそのまま用いて組換え蛋白を効率よく作製する方法を開発した。本研究は、流行地の患者血清とこの手法を組み合わせてメロゾイト期原虫タンパク質から新規マラリア発病阻止ワクチン候補抗原を同定する目的で開始した。 1.熱帯熱マラリア原虫メロゾイト期原虫特異タンパク質の発現 現在までにメロゾイト期原虫遺伝子をもとに組換えタンパク質約80種類の合成に成功した。 2.生命倫理・安全対策等について 本研究はマラリア流行地の患者から分離された血清を材料として行うため、愛媛大学医学部ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会にて本研究計画の疫学研究としての妥当性について審査を受け、その実施が承認された。 3.タイ国における患者血清の採集 患者血清試料の採取については、海外共同研究者である在タイ米軍医学研究所のJetsumon Sattabongkotが、既にタイ国政府および米軍医学研究所の承認を得ており、申請者らと共にタイ国内の複数のマラリア流行地の住民および国境地帯にあるマラリア診療所において血清を約50人分採取した。また、同じく海外共同研究者であるマヒドン大学のRachanee Udomsangpetchも、既にタイ国政府およびマヒドン大学の承認を得ており、重症患者の多いバンコク市内の病院において、軽症、重症、及び最も重度の脳性マラリア患者から、上記と同様にして患者の病状別に合計約50人分の血清を採取した。
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