研究課題
これまで、S.nasaleのミトコンドリアDNAについては、trnT-rrnL-trnC-rrnS(トランスファーRNA、リボソームRNAを含む)の1.9kb塩基配列を調べ解読した。今回は、さらにS.indicumとS.incognitumについて、調べたところ、まだ未解析の領域もあるが、ほぼS.nasaleと同一の遺伝子配置を有する結果が得られた。このことから、日本住血吸虫の起源がアジア地域であるとの仮説をさらに支持する結果となった。また、比国の日本住血吸虫症流行地(ソルソゴン州)において2005年8月、2006年1月、2007年1月に検査を行なった。検査項目はKato-Katz法による糞便検査、血清抗体値測定、肝臓超音波検査(US)である。検査数は3年間で総合計1450名の検査を施行した。その結果、糞便検査陽性率は、7.3%、ELISA陽性率は66.0%、肝臓US陽性率は51.5%であった。これらの結果から、したがって、本流行地域においては糞便検査、血清抗体値測定、肝臓超音波検査を併用することが重要と思われた。また、これらの情報に基づき本地域における日本住血吸虫性肝繊維症の危険因子であるHLA-Class IIアレルの解析を行っているが、まだ不明な点が多く今回はクリアな結果は報告できない。一方、これまですでに、マンソン住血吸虫の7番染色体全体と、性染色体であるW染色体のヘテロクロマチン領域のプローブ化に成功している。今回、マンソン住血吸虫(2n=16)の小型染色体の5番と6番のそれぞれのペインティングプローブを染色体顕微切断法で作成することに成功した。これにより、これまで区別が難しかった染色体が容易に判別できるようになった。これらのプローブは日本住血吸虫やその他の住血吸虫でも利用できると思われ、系統分類に大きな役割をもつと考える。また、この成功は住血吸虫ゲノム解析プロジェクトに貢献するものである。
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