研究課題/領域番号 |
16406012
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 国立国際医療センター(研究所) |
研究代表者 |
狩野 繁之 国立国際医療センター研究所, 適正技術開発移転研究部, 部長 (60233912)
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研究分担者 |
河津 信一郎 国立国際医療センター研究所, 適正技術開発移転研究部・適正技術開発研究室, 室長 (60312295)
畑生 俊光 群馬大学, 医学部, 助手 (60344917)
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キーワード | マラリア / 薬剤耐性 / ゲノム / 疫学 / アジア / 国際研究者交流 / タイ:ラオス:ベトナム:フィリピン:ミャンマー |
研究概要 |
1.リアルタイムPCR法を用いたマラリア原虫ゲノム解析システムの構築 (1)まず、熱帯熱マラリア原虫のクロロキン耐性関連遺伝子pfcrt上の単塩基置換(single nucleotide polymorphism:SNP)の定量的検出を、TaqManリアルタイムPCR法で試みた。(2)すなわち、pfcrtが感受性型の原虫(FCR-3株)と耐性型の原虫(K-1株)を任意の割合で混合した培養血液材料を作製し、耐性型SNPを含む約15bpの塩基配列と同領域の感受性型塩基配列各々に特異的なプローブ、ならびに両型に共通配列のプライマーを用いてリアルタイムPCRをおこなった。(3)その結果、サンプル中に混在する感受性型と耐性型遺伝子の混合比に一致した定量値を、リアルタイムPCRの測定値から推定することが可能であった。(4)さらに応用として、ヒトに感染する4種のマラリア原虫の鑑別を、それぞれの種に特異的なプライマーを設計してリアルタイムPCR法で鑑別することができた。 2.海外調査研究 タイとフィリピンの流行地で患者検体を採取することができた。(1)フィリピン・パラワン島の熱帯熱マラリア患者血液13検体のpfcrt耐性型と感受性型原虫の混合比率を測定したところ、6検体で両型の遺伝子が、5検体で感受性型遺伝子のみが検出され、残り2検体は検出限界以下であった。感受性型:耐性型の遺伝子量の比率(%)は8.7:91.3から44.5:55.5であった。2)また、タイ・ミャンマー国境での39分離株は、すべてK76Tの耐性型変異を有していた。 以上より、マラリア患者の血液中には、異なる遺伝的形質をもつ複数の原虫クローンが混合して寄生していることが明らかになった。薬剤投与によって、その薬剤に耐性の遺伝的形質を持つ原虫が選択され、患者血液中の耐性原虫の比率が高まると考えられるが、耐性原虫と感受性原虫との比率が、個人または地域の薬剤耐性度を規定するかどうかは、今後の研究課題となる。なお、本疫学研究は、「疫学研究に関する倫理指針(文科省・厚労省告示第2号)」に十分留意している。
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