研究概要 |
現在、腸管出血性大腸菌(STEC)はタイ王国ではさほど重要な病原体とは見なされていない。今後、STECのリスクがタイ王国で増加するか否かを、汚染源と考えられる牛の大腸菌分離株を検査する事でその予測を試みた。5つの異なる州の健康な牛の糞便139サンプルに対して、遺伝子型及び表現型によりSTECの分布を調べた。19.4%(27/139)からSTECが分離されたが、ヒト由来株に特徴的な遺伝子型は含まれておらず、現段階ではヒトに有害なSTECはタイ王国の牛には存在していない事が分かった(Panutdaporn N et al, J.Infect.48:149-160,2004)。 Caco2細胞におけるFliCのhBD-2誘導に対して、ガングリオシドがTLR5のco-receptorとして働くか否かを検討した。細胞外液にガングリオシドを加えると、FliCのhBD-2誘導能とFliCのCaCO2細胞への結合能が抑制された。CaCO2細胞にgluoosylceramide合成抑制剤を加えると、FliCのhBD-2誘導能は抑制された。TLR5を発現させた細胞にGD1aを加えるとTLR5のない場合に較べて有意にFliCのhBD-2誘導能が上昇した。FliCはp38やERK1/2のリン酸化を促進し、GD1a, GD1b、GT1bによりこの作用は抑制された。以上の結果より、ガングリオシドはFliCに対してTLR5のco-receptorとして働き、mitogen-activated protein kinaseを介してhBD-2の発現を誘導する事が分かった(Ogushi K. et al, J.Biol.Chem.279:12213-12219,2004)。
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