研究概要 |
ロタウイルス下痢症により発展途上国を中心に世界で年間70万人の小児が死亡している。現在2つの弱毒生ワクチンが開発され世界規模での導入が始まっている。ロタウイルスの中和抗原である表面タンパクにはVP7とVP4との2つがあり、それぞれ、G type(G血清型/G遺伝子型)およびP type(P血清型/P遺伝子型)として定義されている。ロタウイルスワクチンの導入に際し、野外で流行しているウイルス株のG typeおよびP typeを把握することは不可欠である。途上国でのロタウイルス流行株の特徴、とくに新興株の出現の有無を知ることは、世界規模でのワクチン戦略を考える上で不可欠である。本研究では、昨年度に引き続き、ネパールの小児・成人における流行ロタウイルスのGおよびP typeの分布を調べた。この結果、RT-PCR法で型別不能であったウイルス株のVP7遺伝子分節を増幅し、塩基配列を決定することができた。これらの株について抗原決定領域A, B, Cのアミノ酸配列を血清型既知のウイルス株と比較したところ、29株がG12P[6]あるいはG12P[8]株であることがわかった。また、残る1株は、きわめてまれなG11P[25]のヒトロタウイルスであることがわかった。この株はバングラデッシュでの検出に引き続く、世界で2例目となるものである。ネパールでのG12は、これらの株が全ロタウイルス中の20%におよぶ多数を占めていることから、今後継続した監視が必要であろう。ネパールのロタウイルス株のゲノムの多様性は新たな株出現の温床となる可能性が示唆される。
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