研究概要 |
1)中国鞍鋼製鉄所従業員コホートの第2次追跡作業:平成17年2〜3月に行った打合せ結果に基づき、研究協力者の潘國偉氏と馮毅平氏を通じて、第2次追跡実施のための情報収集を進め、現在、当初の研究計画を修正しながら調査実施体制を調整中である。これまで、第1次追跡(1980〜1993年)と同じ対象者(147,062名)で第2次追跡を行う計画であったが、1994年以降の同製鉄所分社化に伴う個人識別番号の刷新により追跡実施の計画修正が必要となった。具体的には、第1次追跡との整合性と連続性を維持でき、かつ、第2次追跡を確実に遂行できるサブコホートに分割した上で追跡を行うものであり、詳細な計画を検討中である。 2)第1次調査結果の追加解析等:第1次追跡データにおける女性25,216名について、15作業関連要因への曝露と死亡(597例:がん217、脳血管系119、心血管系66を含む)の関連を検討した。1980〜1993年の鞍山市一般人口を標準人口とした標準化死亡比(SMR)を算出すると、総死亡やがん死亡他のほぼ全ての死因群でSMRの有意な低下が見られたが、曝露無しホワイトカラー群(10,202名)、曝露無しブルーカラー群(9,879名)、曝露有りブルーカラー群(5,135名)の順にSMRの有意な上昇トレンドが見られた。曝露無しブルーカラー群を基準とした標準化リスク比(SRR)を算出した結果、石綿(SRR=641)、PAH(SRR=238)他の曝露で有意な全がん死亡リスクの上昇が見られた。PAH曝露と粉じん曝露のある場合では総死亡(SRR=496)とがん死亡(SRR=397)の有意なリスク増加が見られ、PAH曝露のない場合の各リスク増加を上回ることから、PAHと粉じんの複合曝露の影響が示唆された。
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