研究概要 |
1)中国鞍鋼製鉄所従業員コホートの第2次追跡作業:当初の第1次追跡(1980〜1993年)対象者(147,062名)の再追跡は,同国の社会経済体制の変化に伴った1994年以降の同製鉄所分社化により,それまでの個人識別番号の廃止および従業員管理システムの全面的刷新により,計画の修正を余儀なくされた。中国側の共同研究者を通じて,第1次追跡との整合性や連続性が維持できるサブコホートの選定を試みたが,いずれも実際の対象集団の決定はできず,第2次追跡が実質上不可能となったために,断念せざるを得なかった。 2)第1次調査結果の追加解析等:第1次追跡データにおける男性121,846名と女性25,216名について,15作業関連要因への曝露と死亡の関連を検討したところ,鞍山市一般人口(1980〜1993年)を標準人口とした標準化死亡比(SMR)では総死亡や主な死因カテゴリー(がん,脳血管疾患など)で有意な低下が見られたが,いずれの因子曝露のないブルーカラー群を対照とした標準化リスク比(SRR)では,多くの因子の曝露群で総死亡や死因カテゴリーで有意な上昇が見られたことから,健康労働者効果によるSMRの低下であると考えられたこと,PAH(Polycyclic-Aromatic-Hydrocarbons,多環系芳香族炭化水素)と粉じんなど複数の因子への重複曝露により,がん死亡のみならず脳血管系および心血管系疾患ほかの死亡リスクが増加することが認められたこと,などを知見として得た。現在,男性労働者における結果のみ論文で報告し,女性労働者の分に間もなく投稿の見込みである。
|