研究概要 |
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP) ATTR V30Mタイプのスウェーデンにおける保因者は、わが国の遺伝子保因者と比べ、発症率が極めて低く、発症しても高齢で臨床像も異なる。この理由を明らかにするため、まず1年目の研究として、1.スウェーデン北部の患者フォーカス(Skelfetea, Pitea, Biskeなど)へ神経内科医、眼科医など延べ8名が赴き、FAP患者の神経症状、生活習慣などの実態調査を行った。また2.微量元素がアミロイド形成機構に重要な働きを持つため、川、井戸、湖、水道水などの微量元素を測定し、日本(荒尾)で得られた同様のサンプルの結果と比較検討した。更に3.genetic backgroundも比較検討するため、実態調査期間に得られたFAP患者のDNAを用いてhaplotype検査を行った。スウェーデン患者の臨床症状に関しては、これまで報告されていたごとく明らかに、日本人のFAP患者より高齢発症で、neuropathyを主体とした臨床症状もmildであることが確認された。微量元素の検討では、砒素のレベルがスウェーデンで得られたサンプルでは日本のサンプルと比べ高いことが判明した。Haplotype検査では、スウェーデンのFAP患者のもつTTR遺伝子周辺のhaplotypeは日本のFAP患者のものと異なることが判明した。スウェーデンのFAP患者のもつhaplotypeは、同時に得られていたポルトガル、スペインのFAP患者のhaplotypeとも異なっていた。臨床症状に関しては、次年度の更なる調査が必要である。砒素に関してはアミロイド形成にどのような影響があるのか、次年度にin vitroのアミロイド形成実験を行い、砒素の影響を検討する。Haplotypeがスウェーデン人で異なることから、スウェーデンと日本のFAP患者のhaplotypeの違いは、環境要因、genetic backgroundの違いの両面が影響を及ぼしている可能性が示された。次年度に更なる研究を行い、これらの点の知見を深める。
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