研究概要 |
本研究では、スウェーデン北部地方に位置するウメオ大学医学部との共同研究の元に家族性アミロイドポリニューロパチー(EAP)の発症、進展の鍵を握るthird factor(s)を明らかにするために、1.FAPの臨床像の違いや進行度、それに影響を与える因子の探求を行った。前年度と同様本年度も、2.スウェーデン北部の患者フォーカス(Skelfetea, Pitea, Biskeなど)へ神経内科医、眼科医など延べ5名が赴き、FAP患者の神経症状、生活習慣などの実態調査を行った。また3.微量元素がアミロイド形成機構に重要な働きを持つため、川、井戸、湖、水道水などの微量元素を測定し、日本(荒尾)で得られた同様のサンプルの結果と比較検討した。スウェーデン患者の臨床症状に関しては、明らかに、日本人のFAP患者より高齢発症で、neuropathyを主体とした臨床症状もmildであることが確認された。電気生理学的検査では、スウェーデンの患者のほうが、軸索変性がより強いことが判明した。微量元素の検討では、砒素のレベルがスウェーデンで得られたサンプルでは日本のサンプルと比べ高いことが判明したが、in vitroのアミロイド形成実験ではその作用は明確な結果は得られなかった。FAPで重要な臨床症状のひとつである硝子体混濁の発症年齢は日本人では47.6±10.1歳、スウェーデン人では67.8±11.5歳、これらの症例におけるニューロパチーの発症年齢は日本人が41.3±8.7歳、スウェーデン人が61.1±14.5歳であり、ともにスウェーデン人が有意に高齢であり、眼アミロイドーシスの発症もスウェーデン人が明らかに高齢であることが確認された。生活習慣は、現地の60名の患者、家族に、詳細な食生活のアンケートを行ったが、発症と結びつく要因は現在までの解析では明らかにできなかった。
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