研究概要 |
これまで、我々の研究において、発展途上国であるバングラデシュでも気管支喘息と診断しうる喘鳴を呈する小児が予想外に多いことが判明している。この先行調査は、バングラデシュの農村部で行なったものであったが、首都であるダッカ市のスラム地区で次いで行った調査においても同様な傾向を示し、また肺炎既往者において高張食塩水吸入法で気道の過敏性が存在することを示した。農村地区であるマトラブにおける5歳児を対象とした調査では16.1%もの高い喘鳴有症者がおり、また抗回虫IgE抗体が高値であれば、より喘鳴の有症率が高いという結果を得ており、従来言われている衛生仮説によると、これは逆説的な結果であった。質問票を用いての喘鳴有症率であるため、より正確な気管支喘息有症率を知り、その発症要因をさらに検討するための調査を計画した。当初は、スラム地区での調査を継続することを計画したが、2004年夏の大洪水の影響もあり、住民の移動がより少ないと考えられる農村部マトラブにおいて前回調査と同じ対象者に調査を行うこととし、共同研究機関のICDDR, B(International Center for Diarrhaeal Disease Research, Bangladesh)内の倫理委員会へ調査計画書を提出し、厳正な審査を経て現地調査の許可を得た。さらに気管支喘息の確定診断に重要である気道過敏性をみるための、高張食塩水吸入法に関し、器械の選定を含めた基礎的な調整を実施した。調査票の記入、気道過敏性試験の実施方法、調査対象児童の診察など、現地スタッフの教育訓練を実施した。2005年3月後半に実際の調査に入れる見通しである。
|