研究概要 |
フィリピン、マニラ市において78例のデングウイルス二次感染症患者においてDF/DHFの重症度を決定した。内訳は、DFが40症例、DHFは38症例であった。これらの患者の急性期と回復期の末梢血血小板数とPAIgGおよびPAIgMを測定し、血小板数のみならず重症度との相関を検討した。 急性期に血小板数は減少するのに対し、PAIgG,PAIgMは増加し、それぞれは血小板数と有意な逆相関を示した。ロジスチック分析からPAIgMの増加はDHF進展と有意に相関することが判明した。とりわけ、PAIgMの20ng/10^7platelet以上の増加はDHFの予測因子となることが推定された。一方、急性期患者の末梢血血小板の溶出液中には健常者のそれと比較して高い抗デングウイルスIgG,IgM活性を検出した。これらの成績からデングウイルス二次感染症において、抗デングウイルス結合活性を有する血小板に付随した免疫グロブリンはその血小板減少機序と重症度に重要な役割を果たすことが推察された。 さらに、デングウイルス二次感染症46症例(DF17症例、DHF29症例)において、末梢血血小板数を制御するとされる血漿中thrombopoetin(TPO)と血管透過性因子として知られるVascular endothelial growth factor(VEGF)について検討した。血漿TPOは急性期に増加し、回復期まで増加傾向を示した。しかしながら、DF,DHF間の有意差は認められなかった。これに対し、血漿VEGFは急性期に低下し、回復期に正常値まで回復した。急性期の血漿VEGFにDFとDHF間の有意差は認められなかった。これらの結果から、デングウイルス二次感染症において、PAIgG,PAIgMによる血小板減少機序以外に、デングウイルス感染に伴う巨核球減少が関与することが示唆された。また、血漿VEGFがDHFにおける血管透過性に関与する可能性は低いと考えられた。 現在、著明な血小板減少を伴うデングウイルス感染症患者に対する大量免疫グロブリン投与に関する研究プロトコールを研究施設の倫理委員会で検討中である。
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