研究概要 |
アジアの小児に見られるウイルス性下痢症、ウイルス性肝炎、HIVなどの母子感染を中心に、診断法の開発と分子疫学的研究を行った。(1)診断としてノロウイルス(NoV)に対するイムノクロマト法、LAMP法を世界に先駆けて開発した。環境中の微量のNoVを検出するリアルタイムPCRを作製した。腸管感染症を来たすウイルスのスクリーニングとしてmultiplexPCR法を開発し、アジアの国々の検体で実施した。gp41部位に設定したprimerによるmultiplexPCRでHIVのサブタイプを決定した。アジアの国でのサイトメガロウイルスの遺伝子診断を検討した。(2)分子疫学として、タイ、中国、ベトナム、バングラデシュ、スリランカ、極東ロシアにおいて経年的にロタウイルス(RV)、腸管アデノウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、NoVを検出するとともに遺伝子解析をした。日本の成績と比較するとRVの割合が多かった。RV G1の割合が2000年ごろから低下し、G9とG3が高くなった。しかし2006年ごろから再度G1が高くなった。ひとつのG型内でlineageに分けることが可能で、流行するlineageは年によって変わってきた。ヒトおよびブタのRVでリアソータントウイルスを見出した。新しいP[27]ゲノタイプをブタで見出した。腸管アデノウイルスは41型が多かった。40,41型はサブタイプに分けられ、新しいサブタイプを見出した。NoVはどの国においてもGII/4が最も多かった。新しいリコンビナントウイルスが見出され、それが主流となることがわかった。NoVは国、年によって同じgenotype内でも異なるクラスターが流行することがあるが概して同じクラスターがほぼ同時期に各国で見られた。アストロウイルスはG1がもっとも多かった。B型肝炎ウイルスは肝臓がんを起こしやすいgenotypeCが多かった。海外(中国福建省)から輸入されるカキについて1年間ウイルスを検査しNoVが多いがRVも僅かに見出した。NoVはGII/4,GII/3であった。
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