研究課題/領域番号 |
16406032
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大野 重昭 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (50002382)
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研究分担者 |
田川 義継 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (40109426)
吉田 和彦 北海道大学, 病院・講師 (90281807)
南場 研一 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70333599)
水木 信久 横浜市立大学, 医学部, 教授 (90336579)
猪子 英俊 東海大学, 医学部, 教授 (10101932)
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キーワード | ベーチェット病 / HLA / SNP / アデノウイルス / ヘルペスウイルス / マイクロサテライト / PCR-Phylogenetic Analysis / 原田病 |
研究概要 |
我々はイラン、ヨルダン、トルコ、日本のベーチェット病患者及び健常人コントロールのうちHLA-B*5101を持つ検体を選出し、HLA-B*5101のプロモーター、イントロンを含めた全塩基配列をdirect sequence法を用いて決定した。その結果、HLA-B*5101遺伝子は民族をこえてプロモーター、イントロンを含めた全塩基配列が完全に一致した。このことから、HLA-B*5101遺伝子はその起源が一つである、と考えられた。さらに、HLA-B*5101遺伝子下流近傍に7ケ所の一塩基多型(SNP)が見られた。このSNPのうち、日本人に多型の見られる4ケ所は白人には多型は見られず、一方白人に多型の見られる3ケ所は日本人には多型が見られなかった。中東に位置するイラン、ヨルダン、トルコの検体ではこれら7ケ所の全てに多型が見られた。以上の結果をもとに系統樹を作成すると、イラン、ヨルダンなどに多く見られるハプロタイプが最初にあらわれ、その後日本に多く見られるハプロタイプ、及び白人に見られるハプロタイプがあらわれたことが分かった。現在は、中東と日本との間に位置する韓国人ベーチェット病患者および健常人コントロールの検体を用いて、同様の結果が得られるか、解析を進めている。 また、日本人原田病患者と健常人コントロール約50名ずつを用い、HLA-DR領域以外の感受性領域が存在しないか、ゲノムワイドな検索を始めた。現在までに第1,5,6染色体上にそれぞれ約50個のマイクロサテライトマーカーを設定して解析を行い、HLA-DR領域以外で、第6染色体上長腕に非常に強い相関を示すマイクロサテライトマーカーが存在した。今後は残りの染色体の解析を進めていくほか、今回までの解析で陽性となったマーカーの周辺にさらに細かくマーカーを設定し、感受性遺伝子候補領域を絞っていく予定である。 アデノウイルス(AdV)、ヘルペスウイルス(HSV)は流行性結膜炎や樹枝状角膜炎の代表的な原因ウイルスであり、その流行の本態、原因などはいまだ詳細が不明で、結膜炎や角膜炎を起こす血清型についてはウイルス自体の性状すら不明なことが多い。近年の変異株の台頭によって制限酵素切断バターンによるPCR-RFLP法の限界が明らかとなったため、我々は新たなAdV迅速同定法としてPCR法で特定領域を増幅後、その全塩基配列を解読し系統解析を行うPCR-Phylogenetic Analysisを開発した。本方法を用い従来から行われている国家横断的なサーベイランスに応用したところ、AdVに関しては中東、東南アジア地域では依然と同じくAdV-8が主体であったが、イギリスのある地方ではAdV-4、本邦ではAdV-37が主体であった。これらのウイルス株の塩基配列はすべて標準株とは異なっており、ウイルスDNAの変異が進んでいることが明らかとなった。また、本邦におけるウイルス株の調査においても、数年おきに新たな変異株が出現しておることも明らかとなり、これらの変異と流行との関連においてウイルスDNAのうちヘキソン領域の変異がよく相関していることが明らかとなった。今後はウイルス変異の解析と臨床症状との関連も検討していく予定である。
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