研究概要 |
これまでのスリランカ共和国をFieldとする海外研究成果として、「#1:前癌病変(白板症、粘膜下線維症)および癌病変(約500症例)では、噛みタバコによる口腔癌では癌抑制遺伝子p53の変異がExon 5に集中する他に類を見ない特徴を持つこと、一方で、前癌病変にはこの変異は認められず、単純な1つのmutationで発癌に到る訳では無いこと(Oncogene 1998, Int.J.Cancer 1999)#2:血球DNAの解析により前癌・癌病変患者ではニトロソアミン類活性化酵素CYP2A6欠失型の頻度は少なく、活性化ニトロソアミン類代謝酵素GSTM1欠損型の頻度が有意に高く口腔癌発症にこれらgenetic background(個体差)が重要な背景因子となっている(AACR 1999, Carcinogenesis 2002)」を得ている。この結果を元に、国立台湾大学歯学部および高雄医科大学と共同で、Fieldの拡大による、2つ(日本を含めると3つ)の地域間の比較のための検体収集を開始した。また、スリランカ・日本の症例において、p15,p16,MNMG等の遺伝子に高率にmethylationが生じており、その頻度が病変の進行に応じて高くなることが共通の結果として示された。即ち、上述するgeneticな変化のみならず、epigeneticな変化も口腔がん・betel chewing cancerにおいて重要な要素となっていることが示唆された。このため、台湾の検体でも同様の結果を得る可能性が高いと考えられ、有望な口腔がん進展機序の解析糸口のひとつと考えられた。特に、methylation assayに関しては検体採取が容易(擦過標本)であるため、mass screeningとして有望と考えられ、検体採取とそれに関わる体制の整備を開始した。さらに、スリランカで推進している(現在のところ)クルクミンによる病変予防・前癌病変の長期観察において、依然高いRECALL率を継続維持しており、着実な成果を得つつある。 尚、本年度はスリランカでの口腔がん予防活動のため、上述の解析作業より、フィールドワークが多くなり、そのための人員派遣のため旅費が想定を大幅に上回ってしまった。この現象は、本年度に限るものと捉えており、次年度以降は、解析に専念したいと反省し考えている。
|