研究概要 |
研究計画書の如く、これまでと同様に下記地域・施設にて検体の集積を行い、解析を継続した。 昨年度(平成18年度)に追加するものとして、口腔病変からの擦過検体を用い、細胞周期に関わる遺伝子(p16)、遺伝子修復に関わる遺伝子(MGMT)のメチレーションを検討項目として加え、その有用性を検討して来た。 ◆◆調査実施国・場所◆◆ ・スリランカ共和国(北部、東部地域を除く全土を対象):ペラデニア大学歯学部附属病院を基点に他18施設。 ・台湾(中華民国)高雄医科大學付属病院(口腔院口腔外科) ◆◆方法◆◆ ◆症例の集積と解析 上記施設を受診した患者より、噛みタバコの習慣を有し、口腔粘膜病変(癌、白板症、粘膜下線維症)を有する者と病変を有しない者(他病変で来院した患者)を登録し、プロトコールに従って臨床的事項を記入し、以下の手順にて検体の採取を行いp14、p15、p16、MGMTのmethylation statusを評価した所、口腔病変における白板症ではMild dysplasia(n=44)、Severedysplasia(n=20)、Submucous fibrosis(n=10)にいて、p14,p15,p16は病理組織学的に悪性化(重篤化)するにつれてメチル化異常を伴う頻度が上昇するのが観察された。特にsubmucous fibrosis症例ではp53の変異が50%に認められ、p14,p15,p16のメチル化異常も60〜80%の極めて高い頻度で観察された。また、国内に於ける検討にて、p16,MGMTのメチル化異常が口腔がん組織において高率に見出されること、また、病変近傍の組織学的に健常な部位からも検出されることより、これら細胞周期や遺伝子修復に関わる遺伝子のメチル化異常が口腔がんの発癌や病変進行に関与している可能性が示唆された(ここまでの内容は、現在、Oral Oncologyに投稿中)。 今年度の検討の結果、これらの遺伝子のメチル化異常の解析は綿棒による擦過標本で十分に施行可能であり、頻回の採取も可能と考えられ、病変(特にがん・前がん病変)のScreeningないしFollow up時のバイオマーカーとして有益と考えられた(DNA解析であるため、検体の採取のみならず保管・輸送においても極めて簡便で、この面からも有益と考えられた)。
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