初年度は、代数体上におけるRSA暗号やElGamal暗号の安全性を評価する場合の基礎となる、問題の解を求めるのに要する計算量の評価を主な目的として、素因数分解アルゴリズムの高速化と離散対数アルゴリズムの高速化について研究を行った。素因数分解アルゴリズムの高速化に関しては、主に、床関数を用いた素因数分解アルゴリズムの計算量について検討を行った。離散対数アルゴリズムの高速化に関しては、効率的な方法がないと見なされている楕円曲線上の離散対数アルゴリズムの高速化について検討を行った。 2年目は、暗号・署名を設計する立場からの代数体上におけるRSA暗号やRSA署名に関する研究と、暗号の強度を評価する立場からの素因数分解アルゴリズムの高速化と楕円曲線上の離散対数アルゴリズムの高速化に関する研究を行った。暗号・署名に関する研究では、2次体上におけるRSA暗号、ElGamal暗号ならびに4次体上におけるRSA暗号とRSA署名に関する研究を行った。暗号の強度評価に関する研究では、合成数nに関する誤差関数を用いる素因数分解アルゴリズムを考案し、その特性解析と素因数分解に要する計算量について検討を行った。 最終年度は、NP完全問題の暗号への応用とNP完全問題を用いた公開鍵暗号の設計、ならびに、公開鍵暗号の安全性に関する研究を行った。公開鍵暗号の設計に関しては、ナップザック問題を用いた条件付ナップザック暗号の設計を行い、LLLアルゴリズムに対する強度評価を行った。RSA暗号の安全性に関する研究として、床関数(誤差関数)を用いた素因数分解アルゴリズムの高速化について検討を行った。本方法は、並列計算を行うことにより、現時点で最も高速な素因数分解法である数体ふるい法よりも高速化がはかられる。
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