カバーデータとよばれる主情報に別のデータを埋め込む情報ハイディング技術の1変種として、埋め込みデータだけでなくカバーデータも完全に再現できる無ひずみ埋め込みの検討を行った。 まず、無ひずみ埋め込みと無ひずみ圧縮との対応関係を示し、無ひずみ圧縮に組み合わせた埋め込み法の漸近的性能を明らかにした。対象とする無ひずみ圧縮法としてLempel-Ziv符号を採用し、カバーデータと埋め込みデータとに相関を仮定しない場合には、カバーデータの圧縮率とその埋め込み容量が漸近的に一致することを示した。なお、この場合の埋め込み容量とは、カバーデータに圧縮も伸張も加えずに埋め込みを行った場合の埋め込みデータの最大長である。データ圧縮法にデータ埋め込みを組み合わせることができるのは、圧縮法が抱える冗長性のためである。本研究では、Lempel-Ziv符号のような再起時間符号化法の冗長性の統一的な比較も行い、冗長性除去手法の相互比較のモデルを提案した。 次に、従来の非可逆埋め込みと本モデルとの関係を解析した。非可逆埋め込みのもっとも基本的なモデルはシンドローム符号化とよばれ、誤り訂正符号と強い関連がある。誤り訂正符号として完全符号を用いた場合の2値画像へのデータ埋め込み法を比較検討し、埋め込み後の画質の劣化を抑えて埋め込み容量を増大させる手法を提案した。さらに、そのような手法を濃淡画像に適用する場合の注意点を明らかにし、濃淡画像の劣化と埋め込み容量の点で高性能の埋め込み法を得ることができた。
|