本年度の研究によって得られた成果 1.Volume Respecting Embedding(VRE)法での次元の設定について VRE法とは、グラフを一度高次元空間に埋め込み、その後低次元空間にランダムに射影するという方法で、バンド幅縮小化問題、VLSIレイアウト問題などへの応用が期待できる。特に、VRE法を用いることでバンド幅縮小化問題に対する確率的な近似アルゴリズムが設計できる。本研究では、既に実装したVRE法によるバンド幅縮小化問題に対する近似アルゴリズムを用いて、様々なグラフクラスに対し実験を行い、その有用性の検証を行っている。特に本年度では、高次元空間に埋め込む際のその次元数についての検証を行った。処理時間の短縮にはなるべく低い次元数が望ましいことが今までの実験結果からわかっていたが、適切なその設定基準についてはわかっていない。本研究を通じて得られた成果は以下の3点である: (1)次元が必要以上に高すぎると解の精度が落ちる (2)次元数の設定はグラフのサイズのみに依存するのではなく、グラフの構造(複雑度)にも(おそらく強く)依存すると予想される (3)適切に次元数を設定すれば、従来あるアルゴリズムと比較して、解の精度はやや劣るものの処理速度はやや勝り、グラフのサイズが大きくなるにつれ、解の精度の差は縮まり処理時間の差は開くと予想される 今後は次元数のチューニングに関する研究も必要と考える。 2.行列マトロイド被覆問題に対する近似アルゴリズムについて マトロイド被覆問題は様々な応用を持ち、(理論的には)多項式時間で処理できることが知られている。しかしながら、実用的な意味では処理時間が高速であるとはいえない。本研究では、行列マトロイドでの被覆問題に対し、最適解の出力を犠牲にし処理の高速化を図った近似アルゴリズムを提案した。
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