本年度の研究によって得られた成果 1.マトロイド被覆問題に対する近似アルゴリズムについて マトロイド被覆問題は多項式時間で解けることが知られているが、実用上処理時間が短いとはいえない。また対象とするマトロイドによっては、実装も容易ではない。このため、最適解であることの保障を犠牲にする替わりに、実用的な意味での短い処理時間及び容易な実装が可能となるアルゴリズムを開発することは重要である。 本年度は、昨年度考案したマトロイド被覆問題に対するアルゴリズムを実際に実装し、実験的評価を行った。具体的には、graphic、cographic、gammoidの3つのマトロイドに対し、処理時間が短く実装も容易なアルゴリズム(graphicマトロイドに対しては近似アルゴリズム)を実装し、実験的評価を行った。 今回我々が提案したcographicマトロイドに対するアルゴリズムは、入力が平面グラフならば2倍の近似率を保障するが、一般のグラフに対しては保障されない。実験から得られた結果として、我々の提案するアルゴリズムは、単に最大独立集合を貪欲的に被覆していく方法と比べると、若干ではあるが良い値を出すことが判明した。 今回提案したgammoidに対するアルゴリズムに関しては、実装は容易ではあるものの、解の精度はあまり良くないことが明らかになった。 2.d-claw freeグラフ上の重み付き最大独立点集合問題に対する近似アルゴリズムについて d-claw freeグラフ上の重み付き最大独立点集合問題に対する近似アルゴリズムとして、V.Bafna等によるSizeTwoImp、Chandra等によるBestImp、BermanによるSquareImpなどが知られている。今回我々は上記3つの近似アルゴリズムの実装及び実験的評価を行った。実験では特に上記3つのアルゴリズムと幾つかの貪欲的アルゴリズムとの比較を試みた。結果として上記3つのアルゴリズムとも、予想通り処理時間では貪欲的アルゴリズムには到底及ばなかったものの、実用的な時間内で貪欲アルゴリズムよりも良い解を出力することがわかった。テストデータとしては、ランダムに生成したUnit SquareグラフやUnit diskグラフ等を用いた。
|