研究概要 |
地図中には,地点等を表す点と,地名等を表すラベル(文字列)が数多く存在する.電子地図システムにおいて地図画面を表示する際には,そこに示す点及びラベルを利用者の要求に応じて選択し,それらを適切に表示することが望ましい.これを可能とするための基礎技術として,本研究では,高度なラベル配置アルゴリズムの開発を目的としている.今年度に得られた成果は以下のとおりである. 1.平面上の点集合Sが与えられ,各点に対して優先度が指定されているものとする.本研究では,まず,既存の代表的なラベル配置法であるWagnerらの方法を拡張することにより,点の優先度を考慮する場合のアルゴリズムを設計した.そして,計算機実験により,この方法がWagnerらの方法に比べ,ラベルを配置できた点の優先度の総和に関して大幅に優れていることを示した.この提案法はS中の点の削除を許さない場合のものであるが,一般に,優先度の低い点を削除することによって,優先度の高い点のラベルをより多く配置することが可能となる.そこで,本研究では,点の削除を許した場合のラベル配置アルゴリズムも二つ提案し,計算機実験により,それらが上述の方法よりさらに優れていることを示した. 2.ラベルの縦書きや長いラベルを2行で表示することを許す場合のラベル配置法を設計し,さらにその実行時間を抑えるための工夫を加えた. 3.実際の地図では,地点が密集している箇所に対して,引出し線を用いることがある.本研究では,引出し線を用いたラベル配置アルゴリズム開発の第一段階として,まず何らかの方法(Wagnerらの方法,上述の提案法等)によってラベルを配置した後,ラベル未配置となった点に対して引出し線を用いたラベル配置を試みるという方法を提案し,計算機実験により有効性を示した.
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