研究概要 |
本年度は,MDA(Model-Driven Architecture)のモデルコンパイラをアスペクト指向メカニズムに基づいて構築する方式を提案した.MDAは,UML(Unified Modeling Language)による設計モデルを特定のプラットフォームや実装技術に依存しないモデルPIM(Platform Independent Model)と依存するモデルPSM(Platform Specific Model)に分け,PIMからPSMへはモデルコンパイラを用いて自動変換する開発方式である.ソフトウェア開発にMDAを適用することにより,従来のコード中心の開発からモデル主導の開発にパラダイムシフトすることが可能になる.MDAで鍵となるのは,モデルコンパイラをどう実現するかである.現在のMDAツールの多くは対象となるプラットフォームごとにモデルコンパイラを用意している.簡単なカスタマイズを許しているツールもあるが,多くの場合,モデル作成者は予め用意されたモデルコンパイラを利用するだけである.しかしながら,モデル作成者自身がアプリケーションドメインの特性に応じてモデル変換規則を定義したい場合が多々あると考えられる. 本年度は,このような問題を解決するため,拡張可能なモデルコンパイラを構築技法を考案した.また,このための道具として,アスペクトを記述するためのモデリング言語AspectM(Aspect for model transformation)をプロトタイプ実装した.モデル作成者はモデリングの一環としてアスペクトを定義することにより,アプリケーションドメインの特性に合った形にモデルコンパイラの機能を拡張できる.これはモデリングレベルのメタプログラミングと捉えられる.すなわち,モデル変換記述も通常のモデリングも同じ土俵で考えることが可能となる. 本年度の主要な研究実績は,拡張可能なモデルコンパイラがアスペクト指向のメカニズムで構築可能であることを実際に示したことである.拡張可能なドメイン専用言語構築のための基盤となる成果である。
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