研究概要 |
本研究は,大規模並列計算機システムでの相互結合網を主たる対象とし,システムの挙動を第三者的に観測する機能を備えることで全体として最適な制御を行うことを可能にすることを目的としている.並列プログラムの実行は,各ノードでの計算とノード間の通信によって成り立つことから,ノードでの挙動理解および最適化の技術,ノード間での通信の挙動把握と最適化の技術の2つの方向から幅広い視野により検討を行った. 前者については,先行研究での成果である「メタレベル計算原理」の具体化のための検討を進めた.具体的には,(1)プロファイリング方式の検討(ソフトウェア/ハードウェアによる手法の検討および有効性の懸賞),(2)種々の最適化方式についての基礎検討,(3)投機を含むマルチスレッド化方式の検討(マルチスレッド化手法,投機的マルチスレッド実行手法)である. 後者では,まず,先行研究にて提案した(4)準大域的な情報を用いた相互結合網ルーティング方式Gross-Line,(5)耐故障性を備えた計算グリッドシステムEagleを,それぞれ完成させた.また,(6)前期(4)を更に耐故障性の観点から発展させたFault-Tolerant Cross-Lineを提案し基礎的な有効性を確認した,さらに,(7)自律的な制御機能の考え方をP2Pシステムに適用したシステムの提案も行った. また本研究の中心テーマである「挙動理解」の検討過程から,(8)物理学(統計力学)および基礎情報理論の考え方を導入するアイデアの発想に至った.プロセッサの内部/外部挙動,相互結合網の大域的な挙動のそれぞれを「エントロピー」の指標によって数値的に表現するものである.本研究では相互結合網への適用を検討し,基礎的な諸性質を明らかにしたほか,その工学的応用として新しい相互結合網制御手法を提案した.
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