研究概要 |
ブラインド信号分離(Blind Signal Separation)技術は,幾つかの信号源からの信号が混信しているとき,源信号は観測できない(すなわち,ブラインドである)が,観測できる混信信号より信号成分を抽出して復元する信号処理技術の一つであり,最近,移動通信や音声・音響信号処理や脳科学の分野で活発に研究されている.本研究では、次世代移動通信に利用することを考慮して、多元情報信号のブラインド分離と復元(等化)のための幾つかの手法を提案した.さらに,提案した手法の有効性をシミュレーション実験で調査した. 提案したブラインド信号分離技術の手法は大雑把に次の三つに分類できる. (1)適応超指数法:時間変動環境に適応できる実時間処理型のブラインド信号分離手法. (2)ロバスト超指数法:ノイズ環境に対応できるバッチ処理型のブラインド信号分離手法. (3)参照信号を併用した固有ベクトル法:信号分離成功率の高いバッチ処理型のブラインド信号分離手法. 上記(1)と(2)についの基となる超指数法は研究者のグループがブラインド信号分離技術として西暦2000年に開発した手法であるが,(1)はそれを適応型に(2)はそれをロバスト型にそれぞれ深化させた手法である.上記(3)は超指数法との関連で,西暦1994年に一入力一出力系に対してB.JelonnekとK.D.Kammeyerが開発した手法を多入力多出力系に利用できるように開発した手法である.(3)について,今後研究者のグループでさらにその手法の有効性などを調査する予定である. 今後,これらの手法開発で得た知見を基にして,次世代移動通信の信号分離器(等化器)が保持すべき機能を理論的に深く解析して,それを設計するための基礎理論を構築する予定である.この基礎理論は深化した次世代移動通信の信号分離器(等化器)の開発に新たな指針を与えるものと確信する.
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