研究概要 |
単一磁束量子(SFQ)回路では,超伝導閉路内に生じる周回電流の方向により右回りと左回りの磁束量子があり,各々を正あるいは負の磁束量子とし,これらの生成消滅を利用することにより2しきい値型論理回路を構成できる.これにより,従来の1しきい値型に比べ論理回路の構成に必要な素子数を低減できる.平成17年度は前年度に検討した基本構成に基づき,磁気結合型と電流注入型のそれぞれについて2入力論理回路の構成法を検討した. 磁気結合型では,2つのジョセフソン接合(J接合)を持つ超伝導量子干渉デバイス(SQUID)を基本回路とし,入力線がインダクターを介してSQUIDに磁気的に結合した構造とする.さらに,SQUIDのJ接合に直列に新たなJ接合を付加し,その間からタイミング信号を入力して出力信号を得る構造とした.入力の重み付けは入力線のインダクタンス値により決定し,入力の方向により正負の入力を実現する。さらに,固定入力を追加する.入力に対し実現しようとする論理に対応した単一磁束量子(SFQ)が発生あるいは消滅し,その後のタイミング信号により出力として取り出す.この構成により全ての2入力論理関数が実現できることを回路シミュレーション(JSIM)により確認した. 電流注入型では,入力線がSQUIDに直接入力する構造とし,入力線を抵抗分割することにより入力の重み付けを決定する.入力以外の構成は,上記磁気結合聖と同様の構成とした.電流注入型についても全ての2入力論理関数が実現できることを回路シミュレーション(JSIM)により確認した.性能評価と動作マージンなどの調査は引き続き平成18年度に行い,電子情報通信学会の研究会等で発表する予定である。なお,平成17年度の国内旅費は電子情報通信学会総合大会(国士舘大学)の超伝導デバイスのセッションに参加する旅費とし,物品費は回路シミュレーション用PCの増設メモリ購入と消耗品に使用した.
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