研究概要 |
本年度は主に以下の項目に関して研究を遂行した. 1.移動オブジェクトデータベースのための効率的な統計情報収集・解析手法の開発 今日では,GPSを搭載した自動車やセンサを持った歩行者などの多数の移動オブジェクトから,移動状況をリアルタイムに取得することが容易になっている.取得された移動状況データの中から特徴的なパターンを抽出することで,大まかな移動状況を捉えることが可能となり,移動オブジェクトの移動傾向の把握や今後の移動経路の推定に利用することが可能となる.本研究では,マルコフ連鎖に基づく移動統計量の抽出方式を開発し,その効率的な推定・収集方式を開発している.今年度は特に,(1)すでに索引付けされてデータベース中に蓄積されている移動オブジェクトの軌跡データからの効率的な移動統計量の抽出アルゴリズムの開発,(2)ストリーム的に配信されてくる移動状況データを効率的に要約するインクリメンタルな移動ヒストグラム構築手法,の2つの手法について研究開発を行った. 2.ウェブ上の空間情報源の探索・統合手法の開発 ウェブ上には膨大な情報資源が未活用のまま存在している.特に本研究で着目するのは,特定の地域に関する情報を提供するようなウェブページ・ウェブサイトである.我々はこのようなページやサイトを空間情報源と呼んでいる.今年度はまず,(1)ウェブのクローリングにより収集されたウェブページ群の内容分析を行い,地理的な情報を抽出し,それに基づいて指定された地域に関する空間情報ハブページ(その地域に関する有用な情報を有しているページ)の検出手法について開発を行った.また,(2)データベース中に蓄積された,特定の地域に関する情報(例:ある地域内のレストランのリスト)をもとに,ウェブ上を探索し,関連情報を統合するための,クローリング手法の開発を行った.それぞれ, 3.実体化されたXMLビューデータの差分配信手法の開発 本研究では,XMLに基づいて情報の配信を行う分散型データウェアハウスの効率的な実現手法について提案を行った.中心となるデータウェアハウスのサーバ(リレーショナルデータベース)と,その内容のうちの一部をXMLデータとして複製して保持するクライアントが多数いた場合,サーバにおける更新をクライアントに逐次反映することはコストのかかる処理である.本研究では,差分情報を計算することで,少量の差分XMLデータのみを配信する手法を提案している.
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