サイバー囲炉裏を学生居室に設置し、ビデオによる記録をもとに、システムの評価実験を行った。その結論として、サイバー囲炉裏は人々を共有インフォーマル空間に集めることができ(行く言い訳効果)、そこに居つづけさせるための効果(居る言い訳効果)があること、システムの導入により共有インフォーマル空間で偶然出会った人同士の会話が大きく触発されていることが確認された。偶然の出会いによって、いつも話すメンバーとは違う人とのコミュニケーションが発生し、普段にない新しい話題が増加することが考えられる。新しい話題は他の話題と結びつけることによって、時に新しい発想へと結びつく可能性が秘められており、個人・組織に役立つ創造が行われることが期待される。 サイバー囲炉裏のプロトタイプシステムを、環境を含めて設置の仕方をデザインし、椅子、敷物、サイドテーブルなどを新しく求め、快適な創発空間を実現した。敷物は畳模様の落ち着いた色彩のものを選び、椅子の形・色は明るい感じのもので統一した。さらに、フロアー型のサイドランプも2基配置し、頭上のライトを消し、水平画面が明るく見えるような工夫も行った。サイバー囲炉裏のシステムを単体で設置するよりはるかに居心地のよい空間が実現できた。このように環境を含めてコーディネートすることは、空間設計において大変重要であることが再確認できた。このようなサイバー囲炉裏環境を外部の人が頻繁に出入りするあるセンター内のコーナーに設置し、どのような人がどのように使うかを注意深く観察できるようにした。 これは、上記のプロトタイプの試用実験では、知識科学研究科のある研究室を創発場として設定したが、これを全く場の使い方や研究のスタイルや学問の性質が異なる本学の他の場に設定した場合との比較研究を今後行うためである。このように、異なる創発場においてどのような囲炉裏メディアが好ましく、どのような提示情報の準備をしておくのが良いかなどを聞き取りやディスカッションを行い、デザインを行った。 水と泡というメディアの他に、パズル、アミューズメントメディア、地図など様々な「言い訳オブジェクト」のバリエーションに関する比較試用実験を行うため、ユーザが簡単にこれらを切り替えて使えるようなインタフェースを開発した。パズルやアミューズメントメディアに関しては、申請者の研究室において研究・試作しているのでこれをインストールした。
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