マルチメディアを対象とした意味解析・理解に関する研究は、その重要性がますます高まっており、本研究では絵本を素材とし、絵本に表現されている物語性という意味背景にまで踏み込んだメディア理解を実現し、絵本を自動生成する機構の構築を目指した研究・開発を行なう。 関連する手法についての幅広い調査から始め、次に本研究の達成に向けて要求されるシステム機能、ユーザインタフェース、コンテンツ作成手法などについて検討を行った。具体的な研究成果には次のようなものが挙げられる。 1.絵本の作成にあたってこれまでに考えられてきている技法について、広範かつ詳細な調査・分析を行った。これを通して、絵本をコンピュータで処理するために必要な基礎的考え方ならびに技術について開発方針を明らかにした。 2.絵本の画面展開の文法として認識されている幾つかの項目を取り上げ、その作用や意義などについて工学的な視点から整理した。段落の自動生成手法ならびに主人公・キーアイテムを自動抽出する手法を提案した。 3.抽出した主人公ならびにキーアイテムを空間上に配置し、具体的な絵として組み上げるための方策を実現した。 絵本という切り口からスタートし、人間が本能的に活用してきたコミュニケーション技法に、コンピュータを用いた今日的なスタイルを加味した、新しいコミュニケーション機構の構築を目指した基礎的知見を獲得することができた。
|