本研究は、疲労のない自然な立体視ができるVR用映像端末の実現を目指し、各々片目に独立に重畳パタンを提示した場合の立体知覚について研究を行うものであり、17年度は、16度に明らかにした両眼融合と奥行き融合が同時に生じる視覚現象のモデル化を行い、その正当性を実験により検証した。また、両眼融合と奥行き融合が同時に生じる条件を明らかにした。さらに、3次元像を知覚する場合の目のピント位置の測定方法を検討した。 1.立体知覚のモデル化:従来のDFDディスプレイでは前後二つのパタンが融合するのに対し、本研究が対象とする立体知覚では前後にそれぞれ左目用、右目用のパタンがあり、4つのパタンが1つに融合する。このモデルとして、視覚系が水平方向にエッジ位置が近接する前後のパタンを同時にステレオマッチングできず、この結果、空間周波数におけるローパスフィルタを用いて、前後二つのパタンエッジを1つとみなしてステレオマッチングを行い、1つのパタンに融合するというモデルを提案した。このモデルに基づくシミュレーション結果が、視差量や前後パタンの輝度比などをパラメータとした実験結果とよく一致することを示し、モデルの正当性を確認した。 2.両眼融合と奥行き融合が同時に生じる条件の明確化:視差量を一定以上に大きくするとローパスフィルタを用いても、前後のパタンエッジは1つに融合せず2つのパタンエッジとして知覚され、この結果、奥行き融合は生じないことがわかった。しかし、依然ステレオマッチングは正常に行われず、前後二つのパタンは本来より互いに接近した奥行き位置に知覚されることがわかった。 3.ピント位置の測定方法の確立:本研究ではパララックスバリア方式の立体ディスプレイを用いるため、クロストークが生じない位置でディスプレイを観察する必要がある。両眼開放レフケラトメーターによりピンチ位置を測定することとして、測定可能な条件を明確にした。
|