研究課題
本年度は、以下のような研究を行った。(1)ニホンザルMT野およびMST野細胞に対して、1)二方向重畳Visual Flow刺激、2)2次元Plaidパターン刺激に対するチューニング特性を調べた。MST野細胞はすべてPlaidパターンのパターン運動に対して最大反応を示したが、MT野細胞ではパターン細胞のみがパターン運動に対して強く反応した。一方、二方向重畳Visual Flowの統合運動に対して最大反応を示したのはMST野統合細胞のみであった。以上の結果より、1)Visual Flowの統合がMT野ではなくMST野において行われること、2)MST野統合細胞とMST野コンポーネント細胞ともにMT野パターン細胞からのみの入力を受けている可能性が高いことが判明した。これらの結論に基づき、MT野からMST野への神経情報統合モデルを提案した。(2)コヒーレントなVisual Flowに対する人の認知特性が、テスト刺激前に呈示される順応刺激にどのように依存するかを調べることにより、広視野運動認知システムにおける順応機構について考察した。順応刺激としてコヒーレントな運動刺激を用いた場合には、順応刺激のコヒーレント値が大きくなるほど運動方向認知の正答率は低下した。また、順応刺激としてダイナミックランダムパターンを用いた場合の方が静止パターンを用いた場合と比較して、運動方向認知率は高くなった。さらに、順応刺激のコヒーレント値が小さいときの運動方向認知率は、ダイナミックランダムパターンを用いたときよりも高くなった。これらの実験結果から、運動刺激の強さに依存して感度を低下させるボトムアップ的な順応メカニズムと、運動刺激の性質に応じて感度を上昇させるトップダウン的な順応メカニズムが協同して働くとする広視野運動順応モデルを提案した。
すべて 2006
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電子情報通信学会技報 Vol.105, No.656
ページ: 1-4