研究概要 |
本研究は正負の文字列の例から文脈自由文法を自動合成する方式を確立し,さらにその応用を明らかにすることを目的としている.この文法学習方式は,上向き構文解析にもとづいた(生成)規則合成と規則集合(文法)の探索からなる.本年度の研究の主な内容および結果は次の通りである. 1.上向き構文解析のために従来のCYKアルゴリズムに代わって,逆導出法と呼ばれる方式が採用された.この方式では導出木を,ある非終端記号Aから入力文字列の第i文字から第j文字までの部分系列への導出が可能であることを意味する項A(i-1,j)の集合によって表す.これによって,一般の文脈自由文法を確定節文法(DCG)やグラフ文法などへ拡張することが可能となった. 2.新しくブリッジ方式と呼ばれる規則生成方式が考案された.これは導出木の欠けた部分を橋渡しするための規則を効率的に生成する働きをもち,従来の帰納的CYKアルゴリズムに代わるものである. 3.規則集合を求めるために,従来の最小規則集合探索に加えて,直列探索と呼ばれる探索戦略を採用した.これによって最小ではないが,例を満足する文法をはるかに高速に合成できるようになった. 4.以上の新しい方式はProlog言語によってSynapseシステムに実装され,評価が行われた.その結果,新しい規則合成および探索は従来の方式より高速であり,しかも一般の文脈自由文法を拡張した文法にもとづく構文的パタン認識などの応用を可能にすることが明らかになった.
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