研究概要 |
本研究の目的は,特殊な画像処理装置を使用せずに単眼のカメラで前方移動する物体を観測してその動きを推定し,一般的なPCを用いて実時間で対象物体の動きを追尾するシステムを構築することである,この目的を達成するために計算量の少ない空間フィルタ速度計測法を採用し,小規模のGaborレティクルを像面上に分散配置して速度分布を計測することとした.この際,視覚系末消の受容野分布を模倣してレティクル配置を工夫することで,像の並進や拡大,回転を推定する手法を確立した.今年度の研究実施内容を以下に要約する. (1)物体表面のテキスチャが乏しい場合でも動きパラメタが推定できるように,これまでに開発してきた速度推定法に改良を加えた. (2)前方物体の接近に伴う像の拡大は,像面内での並進に比べて画像ヤコビアンが小さいため,単眼カメラで物体の接近を検出するためには拡大運動の検出感度を大きく設定する必要がある.これは外乱に対する耐性を低下させる.このために生じる測定値の変動を平滑化することと動きパラメタの予測を行うためにKalmanフィルタを導入した. (3)単眼カメラでは拡大の不定性が残るので初期位置が既知であるとの前提のもとで,推定した物体運動パラメタから物体の動きの軌跡を復元したところ,約1000[mm]前方で位置誤差50[mm]以下を達成できた. (4)前方を移動する物体を特殊な装置なしでビデオレートで追尾できるシステムを完成できた. 使用しているカメラはレンズを駆動して物体を追尾するため追尾可能な視野が限定されるという欠点が残っている.本補助金で購入した6軸ロボットアームの手先にカメラを装着し,光軸周りの回転を含めた対象の動きをなぞる手法の実験を進めている.
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