今年度の研究実績は次の通りである。 (1)相手の行動・心を読むアルゴリズムの研究 人が非零和ゲームをどのように解いているのかを調査するために、非零和ゲームをカードゲームという形で被験者にプレイしてもらい、人の行動から、そこで用いられているアルゴリズムを検討した。そのとき、対戦の条件を、人対人/人対計算機、相手は人と教示/計算機と教示、対而でプレイ/ネットワークを介してプレイなど、条件をいろいろと変えることで、人の行動への変化を分析した。その結果、人は非零和ゲームを直接解くのではなく、いくつかのヒューリスティックを状況に応じて使い分けながら、非零和ゲームを零和ゲームへと変換してから、解いていることが分かった。 (2)人と人工物のインタラクションにおける意図の伝達の研究 人が人工物の行動に「意図性」を感じるのはどのようなときか、逆にどのようなときに「もの」として扱うのかを、条件を様々に変えて実験を行った。実験では、人工物として、「自律移動椅子」、「自律移動立方体」の二つを用い、そのとき人の人工物に対するとるスタンスを、「物理スタンス」「設計スタンス」「意図スタンス」に分類して、人のとるスタンスを評価する方法を比較検討し、良い一致を見ることを確認した。また、その評価方法を用いて、どのような人工物の行動が、人のとるスタンスに影響するのかを調べた。
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