研究概要 |
生物進化の仕組みを自律ロボットの設計に応用する進化ロボティクスが有望であるが,シミュレーションと実ロボットのギャップに起因する問題が無視できない.本研究では,「具現化進化」の概念やそのための進化的計算手法を確立し,その実験環境を構築した.そして,この具現化進化の概念や実験環境のフレームワークを土台として,人間の心や行動,社会的現象の進化的理解を試みた.具体的には,第一に,複数ロボットが遺伝子情報を交換しながらその行動を進化させる具現化進化実験環境を実現する概念や進化計算手法を確立し,群ロボットを用いた具現化進化の実験環境を構築した.また,多数のロボットによる協調行動を進化させるための可能な方式を網羅的に比較評価した.第二に,協調行為の進化に関する包括的メカニズムである「マルチレベル選択」に関して,動的なグループ形成を導入したモデルを構築し進化シミュレーションを行った.第三に,ロボットにおける感情を行動のモジュレータの組み合わせとして定義し,環境条件に応じた適応としてモジュレータが創発しうることを進化シミュレーションで示し,感情の進化的な基盤に関して検討した.第四に,「心の理論」が適応進化の結果であり,また,再帰レベルが知能の深さに密接に関連するとの前提のもとに,基本的な衝突回避行動における心の読み合いの状況を対象とした心の理論の再帰性に関する計算論的モデルを設計し,シミュレーション実験した.第五に,進化と学習の動的な相互作用に対するエピスタシスの影響について検討するために,NK適応度地形モデルを量的形質が扱えるよう拡張し,表現型可塑性の進化を導入して実験を行った.さらに,進化,学習,発生の3つの適応メカニズムの相互作用を検討するために,囚人のジレンマゲーム戦略を対象としたモデルを作成し実験を行った.
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