研究概要 |
本研究の目的は,多入力非線形のデータから,明示性の高いモデルを構築する手法の確立にある.本研究の最終年度である平成18年度においては,(1)感性データの回答傾向に基づいたクラスタリング法,および(2)感性データの回答傾向に基づいたグルーブ間の印象語差異の可視化法個性に基づいた感性データのクラスタリング手法と可視化手法を開発した. 1.感性データの回答傾向に基づいたクラスタリング法 回答者の回答傾向に基づいたクラスタリング法を開発した.各質問項目を軸とする評点空間に布置された対象間のユークリッド距離の関係により類似度を定義した.距離関係は軸の回転に対して不変であるので,直交回転法(OPA: Orthogonal Procrutes Analysis)を適用し,類似度に応じた被験者群のクラスタリングを可能とした.ノートパソコンに対するSD評価データに本手法を適用し,被験者ごとの質問の捉え方のずれに依存することなく,対象に対する評価の遠近が類似する被験者群のクラスタを得ることができることを示した.本手法により,質問項目の設定次第で回答者の自覚しないレベルでの対象に対する共感度に応じたクラスタリングが可能になる可能性を見出すことができた. 2.感性データの回答傾向に基づいたグルーブ間の印象語差異の可視化法 異なるクラスタに所属する被験者同士の評点の相関値から質問間の距離を定義し,クラスタ間での質問の捉え方の差異を可視化する手法を開発した.層別分析もしくはクラスタリング法により得られた被験者群間における質問の捉え方の違いを知ることで,各群の特徴を知ることができる.本手法の特徴は被験者群間での印象語の捉え方の遠近を視覚的に把握できる点にある.クラスター分析のデンドログラムだけでは気づかない遠近を捉えられる可能性を知ることができた.
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