(1)対話によるコミュニケーション 対面対話と非対面対話の2条件を設けて実験を行った。話者の意図、話者に対する対人認知などの心理的測定データと音声の物理的測定ヂータに基づいて時系列的分析を行った結果、コミュニケーションにおける意図の表現と伝達にかかわる時間特性の影響を見出した。 (2)音楽演奏によるコミュニケーション 音声によるコミュニケーションは音響内容が複雑であり、言語的意味内容などの諸要因が影響するために、身体動作・生理的活動のもたらす感性情報の役割を明確に特定することが困難である。この問題を解決するために、音楽演奏によるコミュニケーション事態で実験を行なった。初対面の2名の被験者が電子ドラムの打叩のやり取りでコミュニケーションする実験場面を設定し、その際の身体動作ならびに生理的活動(呼吸・心拍)を測定した。さらに、やり取りの前後において相互の対人印象評定を求めた。実験に参加した被験者ペアは12組であった。実験は、音響的には独立の2室であるが視覚的には一体となる防音室において、対面状態で行われた。得られたデータは、対人間相互作用について定量的検討を行うための極めて有効な情報であることが示唆された。 上記(1)ではコミュニケーションにおいて重要な役割を果たす感性情報について主に音響的側面から定量的検討を行った。(2)において身体動作・生理的活動について定量的データを得たことによって、より多面的・総合的に感性情報の対人間相互影響を検討することが可能となった。さらに、コミュニケーションにおける感性情報の様々なチャネル間相互影響も検討できることがわかった。このことは現実場面における二者間のコミュニケーション過程を解明する上で大きな意義を持つと考えられる。
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