研究概要 |
カオス現象を観察するときは時間が推移するにつれて,どのように変わってゆくかに注目する.一方,フラクタル図形は現象ではなく,無限回繰り返される極限操作の後,最終的にたどり着く集合である.ゆえに,発生する軌道としてはカオス現象が観察され,時間経過して得られる集合はフラクタル的な場合もある.例えば,エノン写像は2次元写像であり,フラクタル構造が潜んでいるとエノンが指摘し,また,エノン写像はカオスであることもすでに証明されている.カオス的に発生しながら,出来上がってゆくフラクタル図形には,カントール構造の存在が示唆されている.カントール構造とは,カントール3進数集合を特徴付ける性質で,離散的な無限閉集合の一つである.カオス現象(初期値鋭敏的不規則性)に内在するフラクタル集合(自己相似性)を深く決定付けるカントール構造を解明することは有意義と判断できる. 今年度の研究では,特に,グモウスキ・ミラー写像に関して,3パラメータのうち2つを固定し,1つを-1から+1まで変化させることにより,その不規則変化する様子をシミュレーションし,多数の図版を検討することにより,カオス性,フラクタル性とカントール構造についての議論を重ねた.その結果,リアプノフ指数を数値計算してその不規則性のしくみを探り,また,多次元離散系におけるカオス判定定理が適用可能かどうか今後検討する方針を得た.さらに,ファジィ解析的手法の考案するために,ファジィ微分方程式の定性解析もすすめ,光情報処理系への実装を目指して,ファジィ解の可視化ソフト,ディジタル・スマートピクセル,ストリーム暗号システムに関する研究発表も行った.
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