平成16年度は、以下の三つの被験者実験およびその予備実験を行い、その解析を行なった。第一の実験では、ノイズを含む(株価に模した)時系列データを被験者に提示し、その提示間隔および精度を変化させた際に、被験者の反応がどのように変化するのかを調べた。反応は、被験者自身の予測への確信度、反応の速さ、および視線の動きによって計測された。現在定量的な解析中である。 第二の実験では、被験者に数値的な情報を与えることなしに、確率的に変動する事象を「経験」させた。この経験に基づいて、あらたな情報が提示されたときに、被験者が将来の事象を予測するために、どのような戦略をとるのかを調べた。結果として、被験者は必ずしも数学的に最適とはいえない戦略をとることが示されたが、他方、被験者は経験の中から、事象の生起確率を、かなり早い時点から非常に正確に捉えていたことがわかった。にもかかわらず、(数学的に)最適な戦略をとらなかったのである。この結果は2005年3月の進化経済学会において速報として発表され、2005年6月のWEHIAに論文が受理されている。 第三の実験では、視覚・聴覚・触覚という異なる感覚器官から入力された情報がどのように相互に干渉するのか(またはしないのか)が検討された。視覚と聴覚については、先行研究とほぼ同様の結果が得られたが、視覚と触覚については、それぞれの入力情報の複雑さや刺激に対する反応の処理時間の差など、干渉の有無を調べる実験の前に処理すべき課題が多く存在することが明らかとなったために、ベースライン設定のための予備実験を行った。
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