平成17年度は、平成16年度中に行なった実験の成果を国内外の学会で報告し、多くの研究者からコメントやサジェスチョンを受けた。これら報告と並行して、以下のようないくつかの新たな被験者実験を行った。 第一は、視覚・聴覚・触覚という異なる感覚器官から入力された情報が、相互にどのように干渉する(あるいは、しない)のか、を検討する実験である。平成16年度中に得られた成果をECVPで報告するとともに、入力条件を変えて、とりわけ触覚情報と視覚情報に対する判断課題が高速で連続する場合に、判断の正確さ・速さにどのような影響力があるのか、を検討する実験を行った。実験結果はこれまでの結果との整合性とも合わせて現在解析中である。 第二は、ノイズを含んで変動する株価(に模した)情報にたいして、被験者が何を基準にして将来の上昇・下降を予測するのか、またその予測の成否がその後の投資行動にどのような影響があるのか、を検討した。とりわけ、予測が的中した際に、そこで用いられた戦略そのものの正しさとは別に、被験者がもつと(先行研究で)言われる「過剰な自信」がどのようなものか、を検討した。この一連の成果は、進化経済学会で毎年報告を続けている。 第三は、低次の視覚情報の変化が、高次の人間の計算判断に影響を与える、という先行研究に基づいている。さまざまな視覚位置に提示された数値情報を、さまざまな姿勢(体性感覚)で受け取り、計算結果がどのように変化するのか、を調べたものである。ここまでに得られた実験結果からは、確かに人間が実際に(即時に)行なう計算は、必ずしも数学的な答えとは一致せず、しかしきわめてシステマティックにバイアスがかかることが示唆されている。
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