本研究の目的は、日本におけるオーラルヒストリー・アーカイブ(口述史資料の収集・保管)の一手段としてインターネット上に映像アーカイブを構築し、ウエブ上での公開に係わる著作権、所有権、肖像権を含めた法的諸問題、および倫理上の問題を同時に研究することである。 今年度はインターネット上でのアーカイブ作りが急速に進む米国の研究者、実践家と緊密に連携し最新の動向を把握することに努め、同時に一部コンテンツ制作を試みることとして、以下の3件の研究実施計画を立て、これらすべてを実行することができた。 (1)研究代表者は2005年8月に、一週間の日程で米国カリフォルニア大学バークレー校リージョナル・オーラルヒストリー・オフィス(ROHO)主催のオーラル・ヒストリー夏季上級講座に参加し、米国における最新のオーラル・ヒストリー理論および実践手法についての知識を深めることができた。この経験を基にした論文「アメリカにおけるオーラル・ヒストリー研究・実践活動の最近の動向」が日本オーラル・ヒストリー学会の学会誌「日本オーラル・ヒストリー研究」創刊号に掲載されるに至った。この講座期間中に、講座参加者数人に対して聞き取りを実施し、その映像コンテンツをウエブ上に展開するという試みを実行し、多くの反響を得たことも付記しておく。 (2)研究代表者は2005年8月に、シアトル市を拠点にウエブ上で日系アメリカ人オーラルヒストリー・プロジェクトを配信しているNPO「Densho」において、ウエブ・アーカイブ制作のノウハウについて研修した。また、将来的にDenshoアーカイブを日本におけるオンディマンド教育目的のために提携利用する将来計画について、代表のトム・イケダ氏と具体的な話し合いの場を持つことができた。 (3)2006年3月に、研究代表者、研究分担者が中心となってオーラル・ヒストリー実践講座を企画し、日本オーラル・ヒストリー学会と共催で日本女子大学目白キャンパスにおいて2日間の日程で実施することができた。米国よりカリフォルニア州立大学ロングビーチ校オーラルヒストリー・プロジェクト創設者で名誉代表のシャーナ・グラック氏を招聘し、ウェブアーカイブの現状と課題について、参加者約100名と共に研修することができた。この講座は米国オーラルヒストリー学会のウエブ上でも紹介され、米国の実践家たちの注目を集めたことも付記しておく。
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