研究概要 |
当該年度に実施した研究は以下の通りである。 1)スティル・フェイス時における乳児の生理的反応:乳児は、極めて早い時期から、他者の応答性、すなわち、社会的随伴性にたいする高い感受性を有している。このパラダイムでは、母親と乳児が通常のコミュニケーションを取っているときに、突然母親が表情を変えずに、応答しなくなる(スティル・フェイス条件)。そのときの乳児の顔面皮膚温をサーモグラフィーにより記録した。その結果、通常のコミュニケーション時に比べて、スティル・フェイス条件では、有意に顔面の皮膚温度が低下することがわかった。乳児の負の情動が生理学的に検知された。乳児の、内的情動状態を、皮膚温度という生理学的指標で捉えられる可能性が示唆された。2)ウイリアムズ症候群児の社会性:ウイリアムズ症候群児は、言語の遅れが見られず、他者とのコミュニケーションも円滑におこなっていると考えられていたが、近年、そのような会話は表面的であり、対話者の心的状態にマッチしていない可能性のあることが指摘されるようになった。本研究では、パズル課題達成場面で、ウイリアムズ症候群児が、達成感を実験者と共有するための発言が見られるかどうかを検討した。その結果、定型発達児に比べて、そのような発言が有意に少ないことが認められた。ウイリアムズ症候群児の社会性における行動的特徴が示された。3)分配・共有の発達:3,4,5歳児を対象として、おもちゃやステッカー分配課題をおこない、分配や共有に関する発達を検討した。その結果、5歳児になると、ある種の公平感を示すような、分配を示す傾向が見られた。
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