研究概要 |
母音の聴覚処理を検討するために日本語話者から誘発脳磁場を記録した。被験者は右手利き日本語話者11名(男性7名、女性4名)であった。4つの合成母音/a/、/o/、schwa、/ae/を刺激として用いた。/a/、/o/は日本語に含まれる母音でschwa、/ae/は日本語には含まれない母音である。加えて、500、800、1200、2000Hzの純音を用いた。母音、純音とも刺激長は600ms(rise/fall、20ms)であった。刺激間隔が1.2秒(Short条件)と4.8秒(Long条件)(onset-to-onset)の2つのセッションを設けた。被験者が受動的に刺激を聴取(両耳提示、刺激強度約65dBSL)している間に脳磁場を計測した。刺激提示時点を0として各刺激に対する誘発脳磁揚を加算平均した。全ての刺激に対して刺激提示onset後約100msに認められるN100mとSlow Field (SF)が認められた。N1mの提示間隔効果(Long条件>Short条件):母音セッションでは左右両半球で同様に提示間隔の効果が認められたが、純音セッションでは右大脳半球側のほうが提示間隔の効果は顕著であった。N1m振幅には母語、非母語間で差はなかった。N1m潜時:母音条件では大脳半球間で差は認められなかったが、純音条件では有意に右大脳半球側で短縮していた(左113ms,右104ms,p<.001)。SFの初期成分:潜時250-300msの平均磁場強度に/a//o/(母語)にのみ両側に提示間隔の効果が認められたが、schawa,/ae/(非母語)は右大脳半球側にしかこの効果が認められなかった。SFの後期成分(潜時400-600ms)には提示間隔の効果は認められなかった。したがって潜時250〜300msに母語特異的な処理が行われる可能性が示唆された。
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