1.高次漸近標準誤差 (1)高次モーメント:構造方程式モデリング(SEM)におけるパラメータの推定量の高次漸近標準誤差を求めるためにパラメータの推定量に関してテイラー展開を3次の偏微分の項まで行った。この展開からパラメータの推定量の分散を求め、通常の漸近分散の次数に次ぐ高次の項をバイアスの調整を行って求めた。この高次の項に関連する観測変数の標本共分散の高次モーメントを扱いやすい形で導出した。 (2)3次偏微分:高次漸近標準誤差を求めるためには一般にパラメータの推定量について、標本統計量(共分散、相関係数)に関する3次の偏微分が必要となる。しかし、パラメータの推定量は通常は標本統計量の明示的な関数ではなく導出には工夫を要する。そのため陰関数における2次までの偏微分の公式をさらに発展させることにより導出を行った。 2.パラメータの推定量の漸近展開 共分散構造におけるパラメータの推定量の分布に関して通常のエッジワース型の漸近展開を求めたほか、母パラメータの信頼区間の構成に便利なコーニッシュ-フィッシャー展開の結果を得た。また、ステューデント化された統計量に関する漸近展開を求めた。 3.漸近バイアス等の漸近頑健性の検討 因子分析モデルの一部やこれをさらに複雑化したSEMにおけるLISRELモデルの一部においては、正規分布仮定の下で得られた、一部のパラメータの漸近標準誤差やモデルの適合を評価するための通常のカイ二乗統計量は一定の条件の下で非正規分布の場合にも成立することが知られている。この性質は漸近頑健性と呼ばれているが、漸近バイアスに関しても類似の条件の下で漸近頑健性が成立することを証明した。また漸近バイアスに関する漸近頑健性は漸近標準誤差の頑健性よりも多くのパラメータに関して成立することを示した。これらはシミュレーションを用いて検証された。
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