積多項モデルを想定した(r×s)分割表における複数の母集団の一様性検定において、検定統計量としてパワーダイバージェンスの族に基づく統計量T(a)を考える。T(a)はa=0の時対数尤度比統計量、a=1の時x二乗統計量となりこの統計量の属を議論すれば通常使用される統計量をカバーすることができる。 本年度は、まずこの積多項モデルに従う確率変数の局所エッジワース展開の導出をおこなった。次にそれに基づき、確率変数の従う分布が連続分布であることを仮定した場合における確率P(T(a)<x)の漸近展開式を導出した。また、離散構造についても、離散の主要部分の項について複数の母集団の標本数が等しい場合においてはその評価式を与えることができた。 さらに、確率P(T(a)<x)のモーメント修正タイプの近似式を導出した。このモーメント修正タイプの近似、連続分布を仮定した漸近展開式に基づく近似式と従来の漸近分布であるx二乗分布による近似の性能の評価をおこなうために、正確な統計量の確率分布を直接的な数え上げの数値計算により求めるプログラムの作成をおこない、それにより、3つの近似の性能の調査をおこなった。その結果、検定統計量が通常用いられる対数尤度比統計量(a=0)およびx二乗統計量(a=1)の場合、連続分布を仮定した漸近展開式に基づく近似およびモーメント修正タイプの近似は従来のx二乗分布による近似より性能が改良されていることが数値計算的に検証された。
|