研究概要 |
確率過程の過程推測の漸近理論の基礎的研究を行った. 1.ミキシング過程の汎関数の漸近展開の応用として,レビ過程で駆動されるオルンシュタイン・ウーレンベック型過程を確率ボラティリティとする確率過程の汎関数の漸近展開を導き,そのバリディティを研究した.これによって,株価のリターンの短期における非正規性を漸近展開の枠組みで説明することに成功した. 2.拡散モデルにおける変化点問題を研究した.一般の非線形パラメトリゼーション,非線形確率微分方程式を扱い,1次有効推定量(最尤型のワンステップ推定量)に対して変化点問題を定式化し,その経験分布過程の弱収束を証明し,検定統計量の漸近分布を得た.このような一般的な構造でCUSUM検定の漸近挙動が示されたのははじめてのことのようである. 3.非同期的離散観測下での2つの拡張過程の共分散推定を研究し,推定量の一致性,漸近正規性を証明した.従来の同期的観測の場合よりもはるかに複雑な問題であるが,株価等への推測理論の実際の応用において,非同期の仮定は現実的なものである.この研究はコロンビア大学の林高樹氏との共同研究である. 4.尤度比確率場を含む統計的確率場に対する多項式型大偏差不等式を研究した.これは確率過程の統計モデル一般に対して適用でき,推定量のモーメントの収束,ベイズ推定量等に応用できる.パラメータによって異なった収束速度のグレーディングのある場合も含み,離散的観測に基づく確率微分方程式の推定量の漸近挙動(mighty convergence:推定量のモーメント収束および確率場の弱収束)を研究した.
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