研究概要 |
1.関数データ解析における感度分析法の開発:関数PCAの感度分析について投稿していたYamanishi & Tanaka(2005)が出版された。ここでは基底関数展開の係数ベクトルの経験影響関数(EIF)を導き、それに基づく感度分析(単数観測値および複数観測値診断)を提案しているが、同時に、関数から適当な区間幅でサンプリングして多変量データに変換した多変量PCAの感度分析との関係について議論し、通常満たされる条件の下で同じ結果が得られることを示した。また、関数回帰分析について回帰係数関数の経験影響関数を求め、それに基づく感度分析の方法を提案した。ここでは単数観測値診断において重要な役割をはたすCookのDが、残差と2種類のてこ比(ペナルティーを入れるときと入れないとき)の関数として、近似的に表現されることについて議論し、通常の回帰分析の場合と同じような考え方で影響の大きい理由をしらべることができることを示した(Harasawa, Fueda & Tanaka, 2006)。さらに、関数正準相関分析(FCCA)における固有値と固有関数の経験影響関数を導いてそれに基づく感度分析法を提案し、影響の大きい観測値の性質が、FCCAを従属変数と独立変数を入れ替えた2方向の回帰として定式化した場合のてこ比と残差を用いて近似的に特徴づけできることを示した(Harasawa, Fueda & Tanaka, 2005)。 2.カーネル多変量解析における感度分析法の開発:カーネル主成分分析(KPCA)においては、観測値xの非線形変換によって定まる特徴空間において主成分分析を行うが、その際、非線形変換後のobjectsの配置を陽的には求めることなく、PCスコアの配置を求めるところに特色がある。関心のあるいくつかPCスコアによるobjectsの相対的配置への各objectの影響を評価するための感度分析法を提案した(Yamanishi & Tanaka、投稿中)。基本的な考え方は非線形変換後の特徴空間を、まず有限次元の空間で近似した後、固有値問題の摂動論を利用して通常のPCAにおける感度分析を行おうという考え方である。 3.外的基準のない多変量解析における変数選択:これまで主成分分析や因子分析など個別の多変量解析における変数選択について議論してきたが、外的基準のない場合の多変量解析における変数選択の統一的方法として、変数選択の基準、選択手順(前進、後退、前進・後退など)などについて議論し、汎用ソフトウェアVASMMに用いて数値的検討を行った(Mori, et al., 2005)。
|