主に以下の2つのタイプの問題について研究を進めた。 (1)前年度の研究で、指数母集団で打ち切り型データの場合に、non-inferiority仮説における尤度比統計量の漸近分布が、自由度1のカイ2乗分布χ用いた形で、1/2+1/2χと表現されるという結果を導いた。しかし、まだ大きな問題として、正則条件の整備が残っていた。この場合、打ち切り条件を定数に固定すると問題は簡単ではあるが、実際的な応用ではほとんど役に立たない。打ち切り条件が確率変数に依存した場合、その変数がどのような確率的条件を満たしていれば、尤度比統計量の漸近分布が得られるかを考察した。結果として、その条件は、各母集団での最尤推定量がそれぞれ一致性と漸近正規性を満たすような条件となることが導かれた。また、この条件は、non-inferiority仮説に依存しないで与えられることは興味深い結果である。 (2)指数分布以外の様々なタイプの生存時間分布モデル、特に、ワイブル分布に対して、まったく同様の考察を行い、尤度比統計量の漸近的性質を調べることを試みた。この分布は、指数分布を拡張した形をしており、パラメータθに加えて、shapeパラメータγにも依存する分布である。ここでの問題はパラメータ数の増加である。まずは、shapeパラメータγを局外母数とみなした場合、θに関するnon-inferiority仮説検定問題に話を絞った。このとき、γの影響をできるだけ取り除くため、パラメータ直交化変換を行うことで、尤度比統計量の漸近分布を同様の形で導いた。
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