研究概要 |
1.アルゴリズム構築 双安定モデルニューロンのネットワーク(NW)が導く連続アトラクターの性質を調べた。アルゴリズムの適用が想定されるデータ構造の一般的特徴を記述するBarabashi-AlbertのスケールフリーNWについて、パラメータ値と連続アトラクターとの解析的関係を導出し、それを数値実験により確認した。 2.アルゴリズム拡張 神経生理学実験(Egorov et al., 2002)の結果は、実際のニューロンが多安定であることが示唆する。これに合わせて、1のアルゴリズムにおいて、双安定モデルニューロンをGoldman et al.(2003)による多安定モデルニューロンに置き換えた。さらに、連続極限をとることにより、より少ない負荷で多安定モデルニューロンのNWの力学を計算できることを示した。 3.概念検索課題を用いたアルゴリズムの有用性検証 Medline1033(1033個の医学関係文書群から質問文に基づいて文書を検索する課題)を用いて、提案アルゴリズム(双安定ニューロンNWおよび多安定ニューロンNW)と従来方法(TFIDFおよび活性拡散)とを比較した。それぞれの手法による平均精度は次の通りであった:「多安定ニューロンNW」>「双安定ニューロンNW」〜「活性拡散」>「TFIDF」。概念検索において、特に多安定ニューロンNWの方法は従来の標準的手法である活性拡散よりもさらに有効であることが示唆される。 4.意思決定に関わる帯状皮質神経活動の解析とモデル化 Isomura et al.(2003)が意思決定課題実行中のサルの帯状皮質から記録したスパイク列を解析し、実際のニューロンも1のアルゴリズムで仮定した双安定性を示すことを確認した。さらに、連続アトラクターを持つ神経回路力学系を用いて、観測された神経活動の時間変化(漸次的な線形増加/減少)を再現した。
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