研究概要 |
クジラやサメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸(CS)標品を用いて培養基質上にスポットを作成し、軸索および成長円錐がスポットへ遭遇する際の振る舞いの違いから、特定のユニットを含むCSと軸索侵入阻止活性の関連に注目して実験を行った。スポットを観察するために蛍光色素でラベルされたdextranまたはalbuminを用いているが、しかしながら詳細な確認実験の結果、(1)デキストラン蛍光色素の非特異的な効果と(2)ラミニンの非特異的な効果、を無視できないことが明らかになった。 (1)ある種のデキストラン蛍光色素(rhodamin-dex, alexa594-dex)にはそれ自身で軸索侵入を拒む性質があり、他種のデキストラン蛍光色素(alexa488-dex)にはそのような性質はない。しかしながらalexa488-dexはコンドロイチン硫酸の軸索侵入阻止効果を打ち消してしまう作用がある。そのためデキストラン蛍光色素を用いることは得策ではなかった。(2)代替としてタンパク質と蛍光色素をコンジュゲートしたもの(rhodamin-albumin)を検討した。rhodamin-albuminには軸索侵入阻止効果はないが、十分な濃度をスポットの標識として用いるとラミニンの吸着を阻害してスポット内のラミニン密度が下がった。その結果軸索侵入阻止効果が、コンドロイチン硫酸に相関するものなのか、ラミニンの密度減少に逆相関するものなのかの判別が困難になる。 これらは「標識したスポットを培養基質上に作製する」際に付随する困難と考えられた。これらを取り除くために実験系の再設計を行っている。ラミニンからなる一様な培養基質を作成した上にCSを吸着したビーズをばらまき、ビーズに遭遇した成長円錐の行動をタイムラプスで観察する工夫をしている。
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