妊娠18日目のC57BL/6マウス(B6)の胎子よりを取り出し、Neurobasal/B27添加の培地を用いて海馬の分散培養を行った。この培地は無血清培地であり、通常の条件ではニューロンが選択的に培養される。しかし、培養条件を検討し、高密度培養(800細胞/mm^2)により、無血清でありながらグリア細胞と神経細胞が共存する混合培養系を確立した。培養開始後21日目で、ニューロンは神経突起を伸長させると共にスパイン(棘)を形成するのに対し、アストロサイトは広い付着面をもって広がり周辺部にグリア突起を伸ばしてた。この培養細胞標本にAMPA型グルタミン酸受容体サブユニットGluR2を強制発現させる組換えアデノウイルスと、GluR2のsiRNAを発現するアデノウイルスを感染させた。感染後1週間目にRNAを調製し、逆転写反応の後、リアルタイムPCR法によりGluR2 RNAの量を調べたところ、GluR2を強制発現させた揚合にはGluR2 mRNAは16倍に増加し、siRNAを強制発現した場合には1/4に発現が抑制された。GluR2の発現量の細胞形態におよぼす変化を観察するため、GluR2に対する抗体ならびに、抑制性ニューロンのマーカーとしてグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)、アストロサイトのマーカーとしてグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)に対する抗体を用いて免疫染色を行った。GluR2を強制発現させると、アストロサイトの突起は退縮し、細胞の接着性が低下した部分も見られた。一方、siRNAの強制発現では変化は見られなかった。GluR2の発現量を変化がニューロンに与えた影響は、予想に反してアストロサイトに類似した。しかし、これは混合培養系における結果であり、ニューロンへの直接的な影響については、低密度培養によって明らかにしていく必要があると考え、現在遂行中である。
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