これまでの我々の研究により、大脳皮質の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンは培養下における分化過程が著しく異なることがわかっている。細胞移動から軸索形成へ移行するタイミングが、ニューロンの種類によって異なる何らかの細胞内メカニズムによって決定されていることが示唆されている。我々は2種類のニューロンにおいて中心体と微小管との結合状態に違いがあるのではないかと考え、中心体から微小管を切断する酵素活性をもつ蛋白、カタニンに着目した。カタニンをsiRNAによってノックダウンし、軸索形成のタイミングに変化があるかどうか、また、伸長阻害は軸索と樹状突起とで違いがあるかどうかを調べた。まず、軸索形成のタイミングに対する影響を見た。培養1日目と3日目にニューロンを固定し軸索マーカーで軸索を染め出した。カタニンsiRNAが導入されたニューロンもコントロールとしてルシフェラーゼsiRNAが導入されたニューロンと同様に、1日目には約25%、2日目には約50%が軸索を作っており、発現抑制による効果は認められなかった。次に、軸索と樹状突起の長さを測定した。カタニンsiRNAが導入されたニューロンでは樹状突起の長さはコントロールと同じであったが、軸索の長さはコントロールに比べて短かった。これらの結果によって、カタニンは軸索が出来ることには重要でないことが分かった。また、カタニンによって切り出される短い微小管の供給は、軸索の伸長に特に必要であることがわかった。
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